横浜簡易裁判所 昭和32年(ろ)342号 判決 1958年2月22日
被告人 相沢岩雄
主文
被告人を罰金弐万円に処する。
右罰金を完納できないときは金五百円を一日に換算したる期間被告人を労役場に留置する。
但し本判決確定の日から三年間右罰金刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
被告人は米駐留軍横浜港湾司令部技術部隊電気課第二工事班の班長として駐留軍施設内の電燈線新設、撤去、改修、追加等の工事を部下班員を監督使用して実施する業務に従事しているものであるが、昭和三二年七月二日午前九時頃より横浜市中区本牧町三丁目百五十一番地所在駐留軍住宅エリヤII内テニスコート線のテニスコート柱より約五十九米間に三千三百ボルトの高圧線二線架設してある処に更に一線追加工事をなすに際し部下班員松田昭雄をして右テニスコート柱より約百四十一米南西方に離れた二三二号電柱に設置されているオイルスイツチを切らせた後班員金沢正一外七名と共に架線工事を開始し正午頃昼食のため一且休憩し午後一時頃再び作業を開始しようとした際さきに切つておいたオイルスイツチが何故か入つていたものであるが斯る場合工事責任者としては作業再開に先立ち更に二三二号電柱に設置されているオイルスイツチが完全に切れているか否かを確認の措置に出るは勿論工事中にスイツチの入らぬ様にスイツチの紐を足場釘、電柱等に緊縛するなどしてこれが安全を確保した後作業を開始し以て不測の事故発生を未然に防止すべき業務上の注意義務あるに拘らず不注意にもこれを怠り右オイルスイツチの安全を確めることなく漫然作業を開始した為め右オイルスイツチが入つていることに気付かず同日午後一時十分頃テニスコート柱変圧器上に登つて作業しようとした金沢正一をして高圧線にて感電せしめ即死するに至らしめたものである。
(証拠・法令の適用)(略)
(裁判官 佐々木広宜)